こんにちは。天の川歯科院長の福島敦司です。
認知症とお口の健康の関係が注目されています。両者の関係は、実は以前からさまざまな調査・研究が行われてきました。お口の健康は認知症にどのような影響を与えるのでしょうか? いくつかの説をご紹介します。
歯周病の人は認知症になりやすい?
認知症には、いくつかの種類があります。代表的なものが「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」といったものです。アルツハイマー型認知症は、大脳の神経細胞が変性して脳が萎縮するタイプの認知症で日本人に最も多いのが、このタイプとされています。
2002年に(財)ぼけ予防協会(現・認知症予防協会)が仙台市で実施した調査により「歯の喪失がアルツハイマー型認知症発症につながる」ことが判明しました。歯の数が減ることに伴い、早期の脳の萎縮が現れることがわかったからです。
歯が減って噛む機能が低下すると、学習能力に関わるアセチルコリンという物質の量が減るため認知症の症状が出る、という説もあります。
歯周病が認知症を引き起こす仕組み?
また、脳血管性認知症は、脳出血や脳梗塞などで脳の神経細胞が傷つくことにより発症しますが、2006年の調査では「歯周病が進行している人には脳血管病変がある場合が多い」という結果が確認されました。
歯周病菌は血液を介して全身をめぐり、血管を詰まらせて脳に血栓を作ります。結果、脳細胞が傷ついて脳血管性認知症の発症を促すので、慢性化した歯周病患者には脳血管性認知症になる人が多いというわけです。
そして、2020年にはアルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドベータ(Aβ)」などの異常なたんぱく質の脳内への蓄積を、歯周病菌が促進させていることが解明されました。
研究チームの九州大学の武洲准教授は「歯周病菌が、異常なたんぱく質が脳に蓄積することを加速させてしまうことが明らかになった。歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある」と話しています。
歯周病予防には?
このような調査・研究から、歯周病の治療や予防が認知症予防につながる可能性が高いことがわかってきました。歯周病の予防にはなんと言っても毎日の歯みがきが重要です。歯ブラシでの歯みがきはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて歯垢をしっかりと除去しましょう。
加えて、定期的に専門的な口腔ケアを受けることも大切です。バイオフィルムや歯石といった歯の汚れは歯みがきでは除去することができず、放置しておくとこれが歯周病の原因になってしまうからです。
また、歯周病になっていたとしても早期の治療で改善は見込めますし、その分、認知症のリスクも減らすことができます。歯周病は末期になるまで症状が出ないことも多い病気なので、特に自覚症状がなくても定期的に検診を受けることは重要です。